三角猫の生態

楽しく貧乏に暮らすための工夫とか節約術とかを書いています。

楽しい貧乏な投資:貧乏でも仮想通貨には手を出さないんだ

最近巷では良くも悪くも仮想通貨が話題である。トマ・ピケティが『21世紀の資本』で財産の成長率が賃金の成長率よりも常に高くなるということを説明したけれど、貧乏人は投資をしないと貧乏を抜け出せない。というわけで億万長者になりたくて仮想通貨投資にのめり込む人が多いようである。
しかし私は貧乏だけれど一攫千金を夢見て仮想通貨に投資する気はない。私は投資自体はやっていて、株と日経平均先物だけ投資対象にして資産運用しているけれど、理由はいくつかある。
・株は特別口座で確定申告を省ける。
先物は確定申告で損失を繰り越せる。
前場後場、ナイトセッションで取引時間が限られているので、一日中相場を気にする必要がない。決算発表やFOMCや選挙結果などで株価が大きく動くタイミングも予想できるので、ポジション解消してリスク回避しやすい。
・売買手数料が安い。
・投資の根拠となる会社の業績が確認できる。
・配当金や株主優待があるので優良銘柄の現物株を長期保有して、キャピタルゲインインカムゲインの両方が狙える。
現物取引信用取引先物取引を使い分けてリスクヘッジできる。

株式会社は資本主義の根幹部分なので、歴史があるだけに法整備もできていて投資をしやすいのである。私が仮想通貨に手を出さない理由もいくつかあるけれど、それはたいてい私が株に投資する理由と逆である。

●私が仮想通貨に手出ししない理由

1.株と比べて投資環境が悪い

・取引所との相対取引を信用できない。マウントゴックスやコインチェック以前にもFXでアルファFXの夜逃げとかがあったけれど、取引所が破産して資産を引き出せなくなったら丸損なので、長期的にポジションを持つのにリスクがある。
・売買手数料が高い。仮想通貨は値動きが激しいので、短期売買で利鞘を稼ごうとするとそのぶん手数料が高くつく。
・利益が雑所得扱いなので税金が高い。先物も雑所得だけれど、仮想通貨は先物と違って損失を繰り越せない。
金融商品でないので金融商品取引法の投資家保護がない。
・いつ暴騰、暴落するかわからないので、ポジションを持ったら24時間気が抜けない。
・外国の仮想通貨規制に反応して値動きするので、世界中から情報を集める必要があって最新情報をフォローするのが大変。

2.仮想通貨自体がいかがわしい

・投資対象として理解できない
投資は自己責任だからこそ、自分が理解できないものには投資しないというのが投資の基本である。私はITオンチでフィンテックも良く知らないのでそもそもマイニングの設備投資や電気代の採算があうか、長期的に維持可能なシステムかどうか理解できないし、投資対象としても理解できない。たとえば仮想通貨での決済が今後の主流になるので発行元の会社の株を買うとかマイニングに参加するというのなら理解できるけれど、仮想通貨自体が直接売買の対象になるのがよくわからない。
コインの発行数が有限→コインの希少価値が高まる→コインの値段が上がる→決済手数料が高すぎて決済には使えないというふうになった時点で仮想通貨としては実用性がなくなって本末転倒で、加熱感は明らかである。それに決済に使うつもりがない人が値上がり期待で買っていて、使わずにホールドするのでは結局は通貨として意味がなくなっている。さらにはビットコインの分裂をコントロールできないので、コインが有限といいつつ無限に分裂できて価値が希薄化するんじゃないの?という技術的なところもよくわからない。

・仮想通貨の必要性を感じない
キャッシュレス化が進んで現金離れしているとはいえ、仮想通貨が必要かというと別にいらない。手数料が安くて世界中で自由に譲渡できるのが仮想通貨のメリットらしいけれど、世界中で自由に仮想通貨を譲渡する必要がある人や企業がどれだけいて、実需がどれだけあるのか不明である。
日本人が国内で買い物するなら電子マネーで足りる。外国で買い物するときならクレジットカードでよいし手数料もそんなに高いわけではない。貿易とかの企業間の決済でも為替予約とかで為替の変動にある程度対応できるし、数時間で価値が乱高下する仮想通貨では決済のタイミング次第で大損しかねなくて業績予測ができないので決済に使えない。
中国では国外への資本流出を食い止めるために外貨規制があって人民元を自由に外貨に換えることができないので、中国人が資産を海外に移転させるために仮想通貨を仲介して外貨に変える需要があるのはわかる。しかし日本人は中国人と違って自由に円を外貨に換えられるし、どうしても決済に仮想通貨を使いたいという場面が想像できないので、わざわざ現金を仮想通貨に換える理由がない。

・法整備されていない
IT業界が法整備が追いついていないグレーゾーンのうちに荒稼ぎするパターンはよくあるし、早めに新しいビジネスに目をつけて投資すれば大儲けできる可能性もある。その一方で、規制されたらビジネスが終わるリスクもある。
DeNAやグリーやメルカリがいくら儲かろうが、私は射幸心を煽るガチャ商法やパクリキュレーションビジネスやDQNご用達フリマアプリは嫌いなので、違法な可能性があるグレーゾーンで稼ぐ企業を投資対象にするつもりはない。仮想通貨もグレーゾーンで、税務署が仮想通貨の個人間の譲渡をどれだけ把握できるのか不明で、マネーロンダリングとか賄賂とか脱税とかに使われる可能性があるし、北朝鮮やテロ組織の資金源になる可能性もあるし、仮想通貨がもたらす利便性よりも違法に使われた場合のほうが社会に影響が大きいと私は思っているので、仮想通貨関連の法整備がされずにグレーであるうちは私の基準では投資対象にしない。

・素人が手出ししている
インチェックで出川のCMが話題になっているけれど、仮想通貨の取引所はCMを打って仮想通貨をよく知らない層を呼び込んでいる。テレビでは億り人を特集して、芸能人が仮想通貨投資をネタにして、一攫千金を狙った人が仮想通貨投資になだれ込んできた。靴磨きの少年理論で、ITの専門知識もない投資の初心者が大勢仮想通貨投資に参入して物知り顔で儲かったと話題にしてさらに欲を出して倍プッシュしているときがカモの狩場で、相場の終わりである。
仮想通貨ブームに乗り遅れたら儲けそこねるとばかりに素人が群がって仮想通貨を買ったので、2017年にビットコインは10万円台だったのが12月には20倍以上になって最高値を記録したものの、仮想通貨の規制観測やらコインチェックのNEM盗難事件やらで1ヶ月あまりで最高値の半値まで落ちて100万円を割った。蜘蛛の糸に群がる罪人がまとめて地獄に落ちるようなチャートになっていて、傍から見ている分にはバブルのフラグがビンビン立っていたのだけれど、欲に目がくらんだ人は死亡フラグに気づかないもんで、買って寝かせておくだけで儲かった投資の素人ならなおさら相場の転換点にドテン売りする判断はできないだろう。急騰急落のボラティリティを利用して百戦錬磨の玄人やギャンブラーが遊ぶような相場で、利確損切りの判断が遅い素人が手出しするような相場ではない。

3.拝金主義者が嫌い

これはまったく個人的な理由だけれど、私は理念も社会貢献もなく他人を踏み台にしてでも金儲けを優先するような拝金主義者が嫌いなのである。仮想通貨を紹介して口座開設するアフィリエイトで金がもらえるようで、仮想通貨を勧める人たちは儲かることだけを強調してリスクを説明しない。仮想通貨への投資を煽っている人ですぐれた人格者を見たことがないし、仮想通貨で儲けたので慈善事業を始めたという億り人の話も聞かない。そういう人たちがいくら儲かろうが結局は社会に貢献するつもりがなくて、他人を踏み台にしてでも自分ひとりが幸せならそれでいいという人たちで、いくら稼いだかを自慢してもその金で何をやりたいかを語れずにただ贅沢したいだけで、社会にいてもいなくてもどうでもよい人たちである。個人的な話だと、私の知人で金儲けに熱心なうさんくさいやつがITの知識もないのに仮想通貨にはまって周りに紹介しまくっていて、彼が手を出すならろくなもんじゃないなと思って私は仮想通貨には手出ししないことにした。
ゼロサムゲームの参加者同士でババ抜きして買った負けたを競っても社会の発展につながらないので、時間の無駄だと私は思う。単なる数値の上下のギャンブルより、競馬や競輪とかの娯楽やスポーツとして楽しめるギャンブルのほうが雇用や文化の発展につながるのでましである。

●貧乏人は投資に気をつけるべき

金持ちは余力で投資しているので、高いリスクをとってベンチャー企業に投資したり、新しい技術に投資したりして先行者利益を得てますます金持ちになっている。余力が乏しい貧乏人が金持ちの真似をしても一度の失敗で再起不能な損をしかねないので、リスクが高い投資には慎重になるべきである。

・確実に儲かる話はない

投資には儲かるリスクと損するリスクが両方あるけれど、儲けに目がくらむと損するリスクを軽視するようになる。FXが出始めたころは株よりもFXのほうがレバレッジをかけられるぶん儲かるとFXに手を出す人が多かったけれど、私は断末魔スレをリアルタイムで見ていたので、欲に目がくらんでハイレバで勝負して失敗した人が大勢いるのを知っている。短期で儲けようとする人は長期で物事の推移を観察する冷静さをなくしてしまう。儲けたぶんを隔離せずに投資に上乗せしてさらに稼ごうとして、損したら頭を冷やす間をおかずにすぐに取り返そうとしてレバレッジをかけて無理なポジションをとって、一度の判断ミスで全財産をなくしたり借金を抱えたりして泣き喚いたりする。さらにはハイレバで短期に稼げることを覚えた人は、いったん資産をなくすとまた低賃金で働いてコツコツ貯金する意欲を失って、社会不適合者になったり自殺したりしかねない。

・貧乏人特有の行動パターンは危ない

貧乏人は特有のさもしい行動パターンがある。他人が得をするとずるいと考えて、他人が得をしている一方で自分が儲け損ねるのが我慢できず、バーゲンで他の人を押しのけて争奪戦をしたり、スーパーの弁当に半額シールを貼ってもらうために籠にキープしたり、西友の偽装肉返金事件のように儲けるために集団でゴネたり、オイルショックでトイレットペーパーが品薄だと聞くと買いだめしようとスーパーに群がったり、地震が起きると水や乾電池を不必要に買いだめしたりする。このように周りを見ずに儲け話に飛びついたり、みんなが買っているからとよく考えずに買い物に参加したり、品薄なものを必要でないのに買いたがったりする行動パターンを投資でやると危ない。
仮想通貨はコインが有限で品薄だから買い手が多いほど急激に値段が釣りあがる構図になっていて、今買いそびれるともっと高くなるからすぐに買わないと儲けそこねるという貧乏人ホイホイのパターンである。赤信号をみんなで渡ると怖くなくなるようなもので、みんなやっているから、みんな儲けているから、と周りを見て安心して、投資は自己責任だという基本的な危機感をなくして浮かれた貧乏人たちが仮想通貨の急落でごっそり刈り取られることになった。

・私が投資で気をつけていること

私は他人がどういう投資で儲けたかにはあまり関心がない。資産選手権で他の人と競争しているわけでもないし、仮想通貨で億万長者になった人が大勢いるから自分も仮想通貨に投資しようという発想で投資はしない。私は投資は金持ちになる手段というより資本主義社会を生き抜くためのサバイバル術のようなものだと思って自分の投資ルールを守ることを心がけていて、自分とは生存戦略が違う人がうまく生きているからといってその人のように生きようとは思わない。猫が鳥のまねをして空を飛ぼうとしても高いところから落ちるだけだし、鯨のまねをして海を泳ごうとしてもおぼれるだけなので、猫は猫としての生存戦略をみつけないといけない。自分がどう生きるか、何のために投資するのかが重要で、貧乏しながらやりたいことをやりつつ金策する人もいるし、バリバリ働いてガンガン投資して金を稼いでリタイアした後にやりたいことをやる人もいる。私は仕事の他にやりたいことがあってそっちで人生をかけたリスクをとっているので、投資でさらにリスクをとるつもりはなく、投資は金策の手段のうちの一つとして利用している。
私は貧乏なのでなけなしの金をかき集めて保守的な資産運用をしていて、長期ポジションを持つこと自体もリスクだと思っているので、あまりポジションを持たない。石橋を叩いても渡らないで、ノーポジで冷静に相場を観察して勉強するのも私の選択肢である。勝てる確率が半々の丁半博打はやらない。6-7割くらいで勝てる確信が十分にもてないならまだ様子見する。8割くらい自信があるときはエントリーする。8割自信あるときがどういうときかというと、北朝鮮関連のリスクで有事の円買いで円高になって日経平均が値下がりしたときの押し目買いとかで、たいていは戦争リスクが杞憂になって値を戻すけれど、ミサイルがうっかり日本に落ちてアメリカと北朝鮮が戦争になって全面安になるシナリオも2割くらい考慮して、全ツッパリはやらないで危ないときはベタオリする準備もしておく。
ジェシー・リバモアもヴィクター・ニーダーフォッファーも伝説的な投資家として成功しながらも大損して退場しているし、いくら稼ごうがリスク管理をおろそかにして最終的に財産を失ったら意味がない。私は政治経済の知識が未熟で投資経験が浅いゴミ投資家だということを自覚して、生き残ることを優先して臆病で保守的な資産運用をしているので大儲けはできなかったものの、リーマンショック東日本大震災もなんとか致命傷を避けてのりこえて、まだ死なずにすんでいる。投資の知識と経験を積んで備えておけば投資のチャンスは数年置きにやってくるので、短期勝負で危険な賭けをせず、長期スパンで投資アンテナを張りつつ自分の得意な投資手法で儲けるチャンスをつかむまで死なないのが大事である。
韓国で仮想通貨で損をした学生が自殺したけれど、早めに利確や損切りをして学習して次の投資に活かせるように余力を残していれば死ぬほど追い詰められることもなかっただろう。金はあくまで他のものやサービスと交換するための道具に過ぎないので、道具を使わずに道具に翻弄されるのでは本末転倒だし、金儲けのために奔走して中身のない人生を送るのではどんなに金持ちになろうが人生の無駄遣いだし、ましてや投資で損したから死ぬというのでは何のために生きてきたのかわからない。
一番堅実な投資は自分が知識と技術と経験と人格を身に着けて、社会の役に立つ人間になることである。私はそういう立派な貧乏人になりたい。いや、できれば貧乏でないほうがよいけれども。

 

バモアの伝記は読み物として面白いので興味がある人は読んでみるとよいよ。